2017年2月10日金曜日

auraを伴う片頭痛もちの患者さんが混合ピルを使っているときの話の持っていき方

aura (視野がゆがんだり、キラキラ光るものが見えたりなどの前兆症状)を伴う片頭痛(偏頭痛)の既往のある患者さんがエストロジェン・プロジェスティン混合の経口避妊薬を使うことの問題点を以前に何度か書いた。

http://koimokko.blogspot.com/2009/08/blog-post_13.html
http://koimokko.blogspot.com/2009/09/aura.html
http://koimokko.blogspot.com/2014/10/blog-post_6.html

こういう事実は知っていても、患者さんに話をどう持っていくかで、吉とも凶とも分かれるので注意。今日はコツを示したい。

典型的な例:
大学生。auraを伴う片頭痛もち。これまでの医療機関は、どこかの大学キャンパスのクリニックもしくは出身地のドクター。PCOS(polycystic ovarian syndrome)があったりして、メトフォルミンとスピロノラクトン服用していたりする場合も。もともと混合ピルを始めた理由は、単純に避妊薬としてだったり、にきびを改善したいから、とか、PCOSの治療の一環として、などなど。片頭痛の予防としてつかっているトパマックス(一般名topiramate)のおかげで片頭痛が最近はめったにない、と満足気。

子芋、これらヒストリーを取りながら、とても驚く、があえてそれを患者さんにはすぐ言わない。(コツその1)

驚きの内容は ①auraを伴う片頭痛もちであるにもかかわらず、混合ピル(禁忌!)が処方されている。しかも、②トパマックスは混合ピルの効果を下げるということを患者さんは前医から聞いていない。

初診だったり、初めてのパップスメア(子宮頸がん検査のための細胞診)が控えていたりすると患者さんも緊張しているので、くつろげるようにおしゃべり(大学の様子を聞くなど)しながらSocial Historyを取っていき、続いてパップスメアを含むフィジカルイグザムを速やかに行う。

そして患者さんが服を着てから (コツその2)

  • auraのある片頭痛もちの人が混合ピルを使うことで脳卒中のリスクが増すことの危険
  • トパマックスが混合ピルの効果を下げてしまうという問題

について「心配だ」と述べる。
決して前医を悪く言うようなことは言わない。(コツその3)

より避妊効果が高く、使い忘れることもなく、片頭痛ともトパマックスとの相性も悪くない方法として、IUD・IUS、インプラントの話を持っていく。プロジェスティン単剤のピルについてもさらっとはいうが、避妊薬としての効果は劣るので、お勧め度は低い、と話す。Depo Provera(プロジェスティン注射薬)も安全に使えるが、にきびに関してはむしろ悪くしてしまうかもしれない(そうとは限らないが)、と話す。

話に患者さんがぐぐっと乗ってきて、じゃ、〇〇に変えたい、などという声が聞けたら、それについて詳しく話していくし、もっとよく調べてからにしたい、ということであれば、Bedsider.org や YoungWomensHealth.org を勧める。あるいは、とりあえず今すぐ使える方法として、Depo Proveraなりプロジェスティン単剤のピルを今日初めて、IUD/IUSやインプラントへの気持ちが固まり次第、そちらにすぐ移行する、という段階的な方法もとれる。

コツ1を無視して、その場ですぐ混合ピルの問題点を言い始めてしまうと、患者さんがショックのあまり、その後の会話も診察もできなくなってしまう可能性がある。

コツ2を無視して、そのまま込み入った会話を続けるのはとても間が悪い。

コツ3に関しては、ネガティブコメントをするかわりに、それぞれの医療者はそれぞれいろんな考え方がある、と前医を立てる。そのうえでなぜ子芋は違う考えに至ったのかを淡々と述べると、通じる患者さんには通じる。特に、本来健康をサポートするべきはずのピルが、万一、若くて健康なあなたに脳卒中を起こすようなことがあっては、子芋は悔やみきれない、と心配を示すと、多くの人は納得する。

もし納得していただけない場合、残念ながら子芋は混合ピルの処方箋を書くことはできない、と謝る。面倒だけども、患者さんは前医のところに戻るか、他に混合ピルの処方箋を切ることをいとわない医療者を見つけないといけない。それまでの間、プロジェスティン単剤ピルやDepo Proveraで間をつなぐことはもちろん勧める。

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