2014年10月6日月曜日

前兆を伴う片頭痛と避妊薬

片頭痛(偏頭痛)持ちの患者さんのなかでも、視覚の変化、失語症、しびれを初めとする前兆(aura)を伴う患者さんは、エストロゲン入りの避妊薬を使うと、脳卒中のリスクが特に上がるため、エストロゲンを含む避妊薬は禁忌(使っちゃいかん)である。

WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病対策予防センター)が発行してある文書にも、その点は明記されている。

http://www.who.int/reproductivehealth/publications/family_planning/9789241563888/en/
http://www.cdc.gov/reproductivehealth/unintendedpregnancy/usmec.htm

これらガイドラインは、決してすごく新しいものというわけではないのだが、他のクリニックでエストロゲン入り避妊薬を処方されて、「薬がそろそろなくなるので(or もうなくなったので)、新しい処方箋をください。」と言って現れる患者さんが依然として後をたたない。

患者さんが前の担当医に片頭痛のことを十分伝えておらず、担当医が前兆の情報を聞き漏らしたのだろう、と思えるケースもあるが、中には、前兆のことも含めて担当医は知っていて(患者さん曰く)、それでもあえてエストロゲン入り避妊薬を使ってきた、という例もあって、厄介だ。

幸い、現在勤めているクリニックは、クリニックの方針として、WHOガイドラインを遵守する、と定めている。私の個人的なイジワルでもなんでもなく、患者さんの安全を守るためにわれわれクリニックはこの方針で行くのだ、と言えるところが心強い。

「この問題を教えてくれてありがとうございます。より安全な他の方法(プロゲスティン剤など)に変えたいと思います。」と言ってくれる患者さんがいる一方、
「ずーーーっと何年も使ってきたこのピルのために今日私は来たのに、それを処方してくれないなんて!!!」と怒りをあらわにする患者さんもある。

従って、患者さんとの話の冒頭で仮に前兆を伴う片頭痛の話をつかんだとしても、そのことをすぐ指摘せず、まずは会話の中で信頼関係を作り、話の流れの中で上手に非エストロゲン剤を勧めるように持って行くのがコツだと思っている。もちろん理由も話すが。

ポイントは、「あなたの健康は大事だ。」というメッセージ。そして、「いま元気なあなたが、仮に避妊薬のせいで命を落とすようなことをあってはいけない。より安全な方法を使いましょう。」というメッセージ。

しかし、どんなに工夫して話を持って行っても、「納得できん!」と泣いてまで訴える患者さんもある。そういう方には、別のクリニックに行って相談してもらうほかない。リスクが高いと分かっていながら処方して、患者さんを危険にさらすことは自分にはできない。

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