2014年7月6日日曜日

HPVワクチン中止の問題点を突いた新聞記事

厚生労働省がHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の積極的な推奨を中止してから1年以上が経過してしまった。この間、日本の一般向け新聞では、

  • とにかく「HPVワクチン=危険」
  • ワクチンよりも、検診をより充実させればいい

という論調の報道が多かったように思う。(小芋はm3.com を通して、日本の医療系ニュースを読んでます。)

ワクチンと検診の2本だてが大事!と思っている小芋としては、とても残念に思ってきた。

「HPVワクチンなんてしなくても、子宮頸がん検診さえすればいいじゃん。」、という主張は、私からすると「火事は起きてから消火器で消せばいい。」と言っているのと同じに聞こえる。

どんなに気をつけていても、火事は起きる。だって人間は失敗するし、携帯電話が勝手に発火することもある。起きてしまった火事は、消火器や消防車で精一杯対応するしかない。でも、消火器があっても、すでに火事が大きすぎたり消せなかったり、火事がほうぼうで起きていて、消防車が出はらっていて間に合わへん、とかいうんでは困る。だから、火事を起こしにくくする対策と、起きてしまった火事に対する対策の、「どっちか」ではなく、「どっちも」が大事。子宮頸がんも1次予防(病気にならないための対策)と2次予防(病気を悪くしないように早期発見する対策)で行こうやないの。

7月3日毎日新聞配信の以下の記事は、従来の論調と違っていて、ワクチン推奨中止により問題点に光をあてている点で注目に値する。

毎日新聞のサイト
http://sp.mainichi.jp/shimen/news/m20140703ddm013040014000c.html
m3.comから見る場合はこちら
http://www.m3.com/news/GENERAL/2014/07/03/230453/?portalId=mailmag&mmp=MD140703&mc.l=49454054

HPVワクチンの摂取率が高い国ではHPVウイルス感染率がワクチン導入前と比べて下がって来ている現状や、検診を毎年受けていたのにも関わらず 23歳で子宮頸がんを経験し、子宮全摘出術を受けた女性の声を取り上げている。

この記事に書かれていないことで、小芋が追加しておきたいのは、
「がん」までいかず、子宮頚がん検診で軽度や中等度の異常が見つかった場合であっても、精密検査(コルポスコピー)などを受ける中で経験する患者さんの不安(例「私、ガンかもしれないんだわ!」)、検査にかける時間と手間(仕事を休んだり、子どもを預けたり)、医療費(個人にとっても、社会にとっても)、なども馬鹿にならないということ。

それから、小芋が患者さんからよく聞く嘆きには、現在や過去のパートナーに対する不信感、パートナーとの関係性の変化、自己嫌悪感(性感染症にかかってしまった汚い自分!というような)、などもある。こういうのは、HPV感染率、とか子宮頸がん罹患率、というような堅いデータには出てこないけど、患者さんの生活・感情には、しばしば影響を与えているわけ。

先天性風疹症候群の予防のために、子どものうちから男の子にも女の子にも風疹ワクチンを勧めるように、HPVワクチンも男女両方の子ども達に一般的なものになる日がきてほしい。日本では女性向けにしか使ってないが、男女両方に勧めている国もある。

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