2014年4月30日水曜日

アジア人を期待する患者さんの話

アジア諸国出身の患者さんが、私の名前をみて「これはアジア人かもしれない。そうだといいな。」という思いで予約をとっていることが時々ある、ということが最近分かってきた。

アジア人といっても、ご存知のように言語も文化も様々なので、私が必ずしも患者さんの母国語を話せるわけではなく、話せないことが大半なのだが、それでも患者さんによっては、アジア人に診察を受けるというだけで、「何となく安心」なのだそうだ。

産婦人科の診察を受けるときに、何となく女性の人に診察してもらいたい、という患者さんのニーズと少し似ているかもしれないな、と思う。一方で、別に誰に診てもらおうと気にしない、という患者さんもいる。

患者さんが母国から持って来たの薬や検査データが漢字で書かれている場合は、漢字ってありがたいなぁ、と心から思う。英語で病名を言ってみても、患者さんが ???という顔をしているときは、漢字で書いて見せると、「あー、分かりました。」ということもある。でもこの技は漢字圏外のアジア人には使えないし、日本語での言い方が必ずしも中国や台湾でも同じとは限らないので、当たって砕けろ的なアプローチである。

アジア人という共通点がきっかけで、クリニックを訪れるハードルが少しでも軽くなるならうれしいことだ。

最終的には出身国とか人種とかでなく、人対人のコミュニケーションと信頼関係なので、1回1回の出会いが真剣勝負と思っている。患者さんが自分の希望する医師やNPを選べること、変更できる(今回気に入らなかったら、次回は別の人にするとか)ことは大事だと思う。

2014年4月27日日曜日

健康診断や人間ドックで受けた検査結果への対応

検査結果はその方その方の家族歴、病歴、身体診察の結果をひっくるめた全体のコンテクストのなかで解釈しないとおかしなことになる。異常値=病気とは限らぬが、異常値=病気でない!と勝手に思いこむのはもっともっと危険。異常値の結果を手がかりにして、さらなる診察、追加の検査などがあってこそ、検査をしたことの意味があるというもの。

わたしたち人間の死亡率は全員漏れなく100%。しかし健康診断や検査の結果をもとに、早め早めに手を打っておくだけで、命の長さだけでなく命の質が変わることは珍しくない。

健康そのものを人生の目的にしては本末転倒だが、ベースとなる健康があってこそ、楽しみも活動の幅も広げられる。

もちろん、どんなに健康に気をつけていても、事故にあったり、遺伝的な病気を発症したりすることはある。一方、自分自身が少し気をつけるだけで避けられる病気だって山ほどあるので、気を払わん手はない、と私は思う。

忙しい人こそ、いまの健康を維持するために、少しの時間を使って定期的な診察を受けたほうがよいと私は思う。入院したり手術を受ける事態になるより、外来でちょこっと見てもらう方が、時間もお金もダブルでお得。

仕事の都合や、家族や子どもの世話が忙しくて自分のことが後回しになってしまう人は多いと思うが、自分が倒れると仕事も家族の面倒をみることもできない。ゆえに、仕事や家族のためにこそ自分の面倒を見る価値がある。

と書くは易し。

恥ずかしながら、家族や身近な人を説得するのはとても難しい。苦戦中。
少なくとも自分自身については、有言実行でいよう、と思っている。

2014年4月23日水曜日

旅行や留学に不便なピル

学期末あるいは卒業を目前にした学生達が、期末テストの合間をぬって、女性健診やピルの処方のために駆け込んできている。これから迎える夏休み、実家でアルバイトします、とか、ニューヨークでインターンするんです、とか、はたまた3ヶ月ヨーッローパで勉強、とかいろいろな計画で目一杯の学生達である。

通常ピルは3ヶ月分処方してリフィル(おかわり)を4回分、つまり1年間は受診しなくてもそのまま続けられるように処方箋をだしているが、長期間にわたって州を超えて、あるいは海外に出向くとなると、いつどの時点でリフィルを得るかがやたら面倒くさい。旅行前に地元の薬局で通常より多くの薬をもらう、ということも手続きを踏めばできるようであるが、保険会社に一手間かけてリクエストしないといけない。

もっとも、国内であれば、処方箋をある薬局から別の薬局に移せるはずなのだが、患者さん曰く保険会社の制約(実際のところは不明)で州外にはトランスファーできなかったとか、メールオーダー(通販専門の薬局)の薬局から実家に届いたピルを自分の滞在先に送ってもらうのに手間取ってピルを切らしてしまったとか、はたまた旅先でピルをごっそりなくしてしまうとか、普段は規則正しくピルを飲んでいる人でも、こういう「事件」とは必ずしも無縁ではいられない。

いつも夜9時にピルを飲んでいる患者さんが、短期留学先のアイルランドではその時間もう真夜中なんです、どうしよう!と真剣に悩んでいる。(本当はアイルランドでも夜9時に飲んだらよろしい。)悩んでもなんとか解決策を見つけて、ピルを飲み続けてくれればよいのだが、混乱と時差と旅の疲れの中で、ピル自体をやめてしまう人も少なくない。

たった1個のピルを飲むのは簡単だが、波瀾万丈の人生の中でも毎日毎日毎日飲み続けるというのはとても大変なことだ。

その点、子宮内避妊具 (Mirena, Skyla, ParaGard) や皮下埋め込み式避妊具 (Implanon, Nexplanon) は3-10年にわたって連続使用できるので、逆にいうと、使い忘れたくても忘れられない。紛失しようにも紛失できない。 短期の旅行にも、長期の留学にも向いている。

これまで以上に、これらLARC (long-acting reversible contraceptive) を避妊の第一選択として勧めよう、と気持ちを新たにする今日このごろである。

2014年4月22日火曜日

自民党の女性の健康に関する提言を読んで思ったこと

自民党が4月1日付で発表した、
「女性の健康の包括的支援の実現に向けて <3つの提言>」
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/124205.html
を読んでの感想を後ほど書く、と予告しておきながらちっとも書いていなかったので書く。

  • 生涯を通じた女性の健康」ということを全面に出している提言書が日本の政党から出たことが、とても画期的だと思う。
  • 従来ありがちであった、「少子化対策」「母子保健」「母と子」「母性」という切り口とは大きく違っている。
  • 妊娠、出産、産前産後のケアといった内容も含まれているが、これらが話のメインではなく、希望する人のライフステージの一つとして扱われているところが、すばらしいと思う。
  • 女性特有のがんや、女性に多くかつ老年期の生活の質に多大な影響を及ぼしかねない骨粗鬆症など、女性ならではの健康問題を広く扱っているところがすばらしいと思う。
  • プロジェクトチームの会合に有識者として出席した人・団体のなかに、女性を直にサポートしている助産師、看護師、産婦人科医、女性シェルター、婦人保護施設、女性の医療に関心の高い医師らのグループなどが名を連ねている。これら実際の現場、ニーズを知っている人が政治家を教育した成果がこの提言書に反映されたものと想像する。
  • 提言書はあくまで提言書であって、この方針に沿った法律を整備し予算をつけていくことでようやく夢が現実のものになるんだと思う。多くの人にこの提言が注目されると、今後の動きにもきっと勢いがつくと思うので、ぜひ読者のあなたも提言書をぜひ見てみてくださいね〜!https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/124205.html

2014年4月21日月曜日

飲み忘れたピル、なくしたピルのつじつま合わせ

薬剤師に今週聞かれた質問。

ねぇ小芋さん、ピル(経口避妊薬)を飲み忘れたときや、うっかり流しに落としてなくしてしまったときに、どのように対処するかという情報は一般向けにもたくさんあります。でもね、そうやって対処した結果、当初の予定よりも1、2日早くパックを終了したとき、次のパックは一体いつ使い始めるのがベストなんでしょう? 

小芋の回答:
私は次の2つの選択肢の中から患者さんに選んでもらうようにしてます。

1. 現在のパックを終了したら、間髪いれず翌日に次のパックを開始する。従来日曜始まりの服用サイクルだった人は、土曜始まりとか金曜始まりにかわるかもしれないが、それでよい。

2. 現在のパックを終了したら、従来の開始曜日まで待ってから新しいパックを開始する。たとえば、従来日曜始まりの服用サイクルだった人が、たとえ木曜日や金曜日のうちにパックを終了しても、日曜日まで待って新しいパックを開始する。この方法では、新しいパックで1週間目が終了するまでセックスをしない or コンドームを確実に使うことが必要。

薬剤師が私に聞くぐらいなので、他にも疑問に思う人がいるかも、と思って書きました。

2014年4月20日日曜日

イカ焼きの季節


おかげさまで、ピッツバーグに春が戻ってきた。昨日は日焼け止めをよくぬって、水をたくさん携えて走った。

一見桜と見間違うような、白い花が街のあちこちで満開である。梨の木の一種だそうである。

桜と決定的に違うのは、独特の香り。「腐った魚のにおい」とか「精液のにおい」と例える人もいるようだが、私には日本の夏祭りの屋台などで売っている、イカ焼きのにおいに思えてならない。

最初ピッツバーグに来たときは、まさかこれが花の香りとはつゆ知らず、「ちょっと春めくと、この辺の人はすぐにバーベキューをするんだなー」、と勝手に感心(?)していた。帰り道によくこの香りに遭遇したので。

ところが、あるよく晴れた朝、またもこのにおいに気づき、こんな朝からバーベキューするわけないやん!と思い、恐る恐る花の香りを嗅いでみると、これがまさにイカ焼きのにおいだったのだ。

ちなみに住宅地やビジネス街の並木でもこの木は結構よく使われている。天気と開花の程度にもよるが、条件がよい(悪い?)と香りもいっそう強烈である。

この件について、すでに少なくとも一度は本ブログに書いていたと思ったが、自己検索してみたところ見当たらなかったので、書いてみた次第。

2014年4月19日土曜日

皮膚病変の記録に便利なスマートフォン

皮膚病変があるとき、症状が出現してから予約をとって実際診察に至るまでの間に、症状が大きく変わる(よくも悪くも)ことが珍しくない。

診察の際、患者さんが最初はもっとこうだったんです、ああだったんです、とおっしゃっても、聞いた情報から想像するだけではなかなか限界があるのが常であった。

スマートフォンが大分一般的になって(もっとも私は持ってないが)、従来のデジカメよりも「メモ」感覚で写真をとることが習慣化した人が多いのか、「こんな感じだったんですよ。」とスマートフォン上で写真を見せてくれる患者さんが増えた。初期からの症状の経過を逐一撮影しているマメな患者さんもいる。とても役に立つ。

患者さん自身は別に心配していないけど、写真を親(しばしば医療関係者)に見せて相談したら、クリニックで診てもらいなさいと言われたんで来ました、というケースも。

とても気の毒に思ったのは、患者さんが靴擦れの写真を親御さんに送ったら、なぜか梅毒に違いない!と決めつけられてしまった、という話。写真を誰とどのように共有するかは、慎重に考えないといかんね。

2014年4月18日金曜日

期末テスト前でなおさら増すストレス

早くも、大学では期末テストの時期である。大学4年生にとっては、卒業目前。

キリキリして余裕のない表情の学生さんも少なくない。事前にインターネットでいろいろ調べすぎて、自分で判断した診断名に一喜一憂し疲れ果てたあげくの受診、という感じのケースも。

「大丈夫ですよ。」というヒトコトに、「救われる思いです!!」と一面の笑顔で帰って行く患者さんがいる一方、不安感が最後まで払拭できない様子の患者さんもいる。難しい。

2014年4月16日水曜日

初夏から冬へ転落

週末から月曜にかけて、初夏という感じのさわやかであったかい(やや暑いくらい)日が続き、浮かれて半袖何ぞを着ていた。ところが一転して昨日は雪が降り、今朝はまた氷点下4℃近くにぐっと寒くなった。せっかく咲いていた水仙たちがひょえ〜〜という感じでしおれてしまった。立ち直ってくれるとよいが。


2014年4月15日火曜日

本物の医師と看護師

ある同僚が昼休みに建物の外を歩いていると、キャンパスツアー(高校生やその保護者などのお客さん方を学生スタッフが案内するツアー)を引率している学生が次のように説明していたのが聞こえたそうな。

「こちらの建物は○○館です。この中にある学生用のクリニックには本物の医師と本物の看護師 (real doctors and real nurses)がいるんですよ!」

これを聞いたスタッフは思わず吹き出しそうになってしまったと。

言い方はどうであれ、学生達に頼りがいのある場所と思われているなら、よいとおもう。クリニックのスタッフは私が一番若い部類で、ベテランスタッフが勢揃いである。

2014年4月13日日曜日

Point State Park の噴水まで往復

今日は自分の住んでいるところから、ダウンタウンのある三角州のさきっちょの噴水まで走って往復してみた。時間にして2時間あまり。ぽかぽか陽気で、両手に持って行ったペットボトルの水をすべて飲み干してしまった。本番は数キロごとに給水所があるので水を持たずに走れるのがよい。

快適に走れる距離が伸びて来てうれしいが、フルマラソンの距離を思うとまだまだである。計画的に練習していた人は、先週くらいに30km くらい走っていて、その後は徐々に走る距離を短くしてむしろ体力温存(?)していくそうだが、私の練習はまったく気まぐれだ。本番まで残り3週間。

2014年4月12日土曜日

教育プログラムへのフィードバック

自分が所属している、NPWH (女性の健康分野の全国レベルのNP組織) がおこなっていた継続教育に関する調査に協力して、電話インタビューを受けた。このインタビューには、先にオンラインでのアンケート調査に参加した人で、さらに関心のある人が参加している。

今まで利用したオンラインや紙の教育プログラムのなかで、何がよかったとか、今後こうしてはどうか、などということを話せてとてもよかった。継続教育の単位のためだけじゃなくて、実際役に立つプログラムが今後ますます増えることを期待!

2014年4月11日金曜日

メンターとのご飯

2ヶ月前に定年退職したメンターと久々にあってご飯を食べた。メールではちょくちょく近況を報告して来たが、やはり会って話せるのは至極よかった。2時間半があっという間に過ぎた.

職場ではもう一緒に働けないけれど、毎日の私の仕事のなかで、メンターに教わったたくさんのコツや視点を使わない日はない。感謝感謝。

2014年4月10日木曜日

ほそぼそ中国語

積もればチリもなんとやら、で昨秋からほそぼそとやってきた中国語が、ちょっぴり身になってきた。相手が眉をひそめずに、私がなんと言ったか分かってもらえたときはとてもうれしい。診察の最初と最後の部分だけの中国語であるが。。

もっとも中国語で患者さんを診察する必要性はまったくない。私の中国語よりも、患者さんの英語の方が遥かに遥かに上である。(英語を使って、大学・大学院で勉強しているんだから、当然。)

2014年4月9日水曜日

IUD・IUS挿入の前には、しっかりご飯を食べるべし

子宮内避妊具(IUD/IUS) の挿入を希望する患者さんには、お昼ご飯をしっかり食べて、そのあとイブプロフェンかナプロキセンなどの消炎鎮痛剤を飲んだ上で来院するようにお願いしている。

空腹で消炎鎮痛剤を飲むと、胃がしんどい思いをする。しかし、ご飯を食べてきてもらう理由はそれだけではない。空腹だと、IUD/IUS挿入中や挿入後の迷走神経反射(低血圧、失神、嘔気など)がどうも多いかんじから。挿入自体はとてもスムーズに行っても、その後気分不良をきたすと、患者さん本人にとってあまりいい思い出にならない。またスタッフにとっても、患者さんの気分が回復するのを見守らないといけないことになる。

とくに、21歳未満の患者さんの場合、IUD/IUS挿入時 = 生まれて初めて膣鏡を使う機会、なんてことも珍しくないため、特に緊張・不安が高まりやすいように見受けられる。

処置中、手を動かしながらも、絶えず患者さんとしゃべり通して、介助してくれるナースとともになるべく和やかに笑いを取りながら(←ここ重要)、丁寧にかつ迅速に作業をすすめる。

Mirena や Skyla を使っている友達の話を聞いて、ぜひ自分も、と心を決める患者さんが続出している。よいうわさが続くように、一回一回が勝負である。繰り返すが、ご飯はしっかり食べて来てもらおう。

2014年4月8日火曜日

避妊カウンセリングの専門家に質問できるサイト

オンラインで、避妊薬や避妊カウンセリングについて質問できるウェブサイトがある。
https://www.managingcontraception.com/qa/
患者さんだけでなく、医療者からの質問も幅広く受けつけている。過去のQ&Aはキーワードで検索できる機能もあって便利だ。

先月、ある既往歴のある患者さんの避妊薬選択に迷い、同僚に相談したり、このウェブサイトの過去のQ&A や Up to Date (オンラインベースの医学書)を検索したが、決め手となる十分な情報が得られず、ウェブサイトを通して質問を送った。

すると、避妊カウンセリングの第一人者の1人、Dr. Robert Hatcher 自らがメールで返答してくれた。自分の考えていたことに同意してくれる回答だった。

専門家1人の意見は、あくまでその人の意見ではあるが、遠くにいても、このように一臨床家の相談に乗ってくれる専門家の存在は大きい。

なお、かなり昔に、Managing Contraception in Your Pocketという小さな本について紹介したことがあるが、Dr. Hatcher はこの本の作成に関わっている中心人物の1人である。 臨床に役立つちっちゃな本は各種あるが、避妊カウンセリングに関わる私にとっては、この本は決して手放せない。おススメである。

2014年4月4日金曜日

提言書見つかりました

3/31 の私の質問に、ironika さんがコメントしてくれました。
こちらがまさに私が探していた自民党の提言書、「女性の健康の包括的支援の実現にむけて」です。
4月1日付になっています。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/146_1.pdf


感想を後日書きます。

追記:
感想を書きました。