2012年2月25日土曜日

安全性とQOL

地元NP協会主催の勉強会があった。朝7時半から1時間の講義×5本。参加者は40人ほどでこじんまりしていたが、内容はとてもよかった。

Dysfunctional uterine bleeding (機能不全性子宮出血)の講義で、
1. 安全を確保すること (ガンや血液疾患などといった何か大きな原因が背後にないか見極めること)
2. 患者さんの 生活の質 (quality of life) を確保すること
の2つのポイントをおさえてアプローチすることが大事だ、と強調されていた。

これは、ごくごく当たり前のことなのだが、残念ながら健康保険がなかったり、あっても非常に限られた内容しか面倒を見てくれない保険の場合、血算やTSH(甲状腺刺激ホルモン)などの血液検査や経膣・経腹超音波、子宮内膜のバイオプシーなどの検査を実施できず、上記の1.が十分できないことがある。(もちろんhistory & physical exam は最大限頑張るが。)

そういった場合、異常出血の原因さがしが不十分のまま、とりあえず打つ手は打たねばということで、いきなり2.のマネジメントに入らざるをえない。連邦政府や州政府由来の各種プログラムは、ホルモン系の避妊薬に関しては助成してくれているところが多いので、それをしばしば出血対策に使う。(例:ピル、Nuvaring、Depo Provera という注射薬。)政府のプログラムが使えない患者さんの場合、ピルを自費で(1ヶ月に13-20ドルくらい)負担してもらうこともある。もちろん禁忌がないか確認したうえで。あとはNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)を使う策とか。

このように無保険・不十分な保険の患者さんを目の前にしている私に助言があったらお願いします、と講師に質問した。

講師も困って会場の参加者に質問をふったが、妙案が湧き出てくることはなかった。だけど、「先のような状況下において、とりあえず使える手を使い始めて経過を見ることは悪いことでない。大きな問題を見逃すのでは、という恐れは分かるが、大きな問題が隠れている場合はそのような『お試し策』を講じても改善が見られないであろう。」と講師が言ってくれたことがせめてもの幸いである。でも、言ってくれたところで、診断見逃し、診断遅れのリスクが消えたわけでもなんでもない。

健康保険制度改革のバトルのすんだ暁に、こういう話が「過去のこと」として語れるようであってほしいが、今のところは悲しい現実である。

あとで参加者の1人から、「あなた、この理不尽な状況をなんとかするには、グラントを書いて、そのお金で超音波の機械を買ったらいいのよ!」とも言われた。彼女はERで働くNPなので、身近に超音波の機械があるようだった。(ちなみにアメリカの産婦人科の診察と超音波検査は分業のところが多く、多くの超音波検査は放射線科で行われている。)う~ん、そういうアイディアもありか。


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