2011年11月3日木曜日

乳がんと避妊

40歳代前半のAさん。昨年のannual exam のときにマンモグラムを勧めたが、結局今年のannual exam で再会するまでに受けていなかった。私が受けることのメリット、受けないことのデメリットを話してみたところ、「はい~~~、今年は行ってみますよ。。。」としぶしぶ納得。これが大体2ヶ月まえの話。

結果、乳がんが見つかった。触診上の所見も自覚症状もまったくない段階で、スクリーニング・マンモグラムを受けたからこそ発見できたがんである。

Aさんは、長年デポ・プロベラ という注射タイプの避妊薬を愛用してきた。3ヶ月に1回、規則正しく注射を受けにみえた。骨量減少のリスクを考えると、何年にもわたってデポ・プロベラを使い続けるのはよいことではないのだが、Aさんはあえてこの方法を選んできた。注射さえ受ければよいという簡便性と、月経がほとんど来ないという点が、彼女の何よりのお気に入り。

そもそも、年齢(35歳以上)とタバコを吸うことを鑑みると、エストロジェンを含む避妊薬は禁忌。(血栓や心血管疾患のリスクが高くなるから。)したがって使える方法としては、デポ・プロベラのほかプロジェスティン単剤のピル、インプラノン(皮下埋め込み型の避妊薬)、子宮内避妊具、コンドームやペッサリーなどのバリア法、あるいは思い切って不妊手術などの永久避妊、というように限られる。

さて、一旦乳がんと診断されると、デポ・プロベラなどの女性ホルモンを含む避妊薬は使えない。ホルモン系避妊薬が乳がんを発生させるわけではないが、女性ホルモンに敏感な乳がんの進行を早めてしまう危険があるからだ。

そういうわけで、今回の避妊カウンセリングは、
  • バリア法(コンドーム、ペッサリー)、
  • 子宮内避妊具(銅付加IUD パラガード)
  • 永久避妊法(卵管結さつ、ESSURE、男性不妊手術 など)
の3本にしぼられた。

相談の結果、Aさんは子宮内避妊具、パラガードを希望された。

今回の受診に至るまでには、予約→ 予約変更 → 予約日に現れず → 再度予約 → 予約日の前日に日にちを間違えて来られたがこちらが受け入れる、 という変遷があった。おそらく、ま、これは想像の域だが、外科医への受診、別の病院でのセカンド・オピニオン受診、手術日の決定、などAさんにとって物事が目まぐるしく動く中で、かなり困難や動揺があったためでないかと思う。

本当はパラガードの処置まで終わらせる時間があったらよかったが、今回は選択肢の相談だけで時間切れになってしまい、また日を改めて行うことにした。Aさんにはあらかじめパンフレットを郵送していたので、1から10まで説明する必要はなかったのだけど、納得して決める、という作業にはやはり時間がかかった。


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