2011年2月3日木曜日

刑務所における性感染症対策


昨12月、CDCから4年ぶりに性感染症治療に関するガイドラインが発表された。CDC とはCenters for Disease Control and Prevention (米国疾病予防管理センター)のことで、医療に関するたくさんのことを研究したり、指針を示したりしている国の機関だ。CDCの性感染症ガイドラインはさまざまな文献を専門家集団が吟味した上で産み出されている。治療現場にいる者に使いやすいように編集されていると思う。全100余ページ。ハウスメイトのナナコさんの道具を借りてしたら断然使いやすくなった。(いずれCDCウェブサイト上でハードコピーを注文できるようになるはず。)

さて、前版と比較すると、新しい薬が追加され、耐性の問題(薬が効かない)のため使用すべきでない治療方法は削除され、またいくつか新しいトピックが加わっている。なかでも、刑務所などの矯正施設にいる人々の傾向(性感染症の頻度が高い)と対策について触れたところをとても興味深く読んだ。

刑務所に入っている人は入っていない人よりも経済的社会的地位がより低く、都市部に住み、民族・人種的マイノリティーがより多く、性感染症にかかりやすい行動(コンドームなしのセックス、複数の性パートナー、ドラッグやお酒の使用、生活やドラッグのための売春行為、強要されるセックス)が珍しくなく、かつ刑務所入所前は医療へのアクセスがないことが多い。とりわけ予防的なケアを受けていないことが多い、と。

一昨年勤めていたオフィスでは、刑務所から職員2人に付き添われて足かせ&手錠をつけたまま来所する患者さんが時々いた。おりものの異常があると刑務所の職員に訴えて、診察にこぎつけるのは結構難儀だったかもしれない。症状があればこういう経過になるけれど、無症状の場合は、スクリーニング検査をしない限りみすみす見逃していることが多いだろう。

このような状況を鑑み、CDCは思春期および35歳以下の女性については刑務所や矯正施設への入所時にクラミジア・淋菌感染症の全例スクリーニングを行うように勧めている。

今のオフィスでは刑務所から囚人服のまま連れてこられる患者さんはいないが、会話のなかでふと、「私が前刑務所にいたときにね・・・。」とか「彼は今刑務所でさ。」という話が登場する。刑務所の中の人はいずれもとの世界に戻ってくるから、刑務所の中の人の性感染症対策は、みんなの健康のためでもある。

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