2009年8月16日日曜日

子宮頸がん検診のおはなし

アトランタの日本人向け情報誌に、アトランタ医療従事者の会のメンバーがコラムを書いています。ぼちぼち自分の番が来るので、原稿を書き始めました。自分が仕事でいつもやっている内容を選んでみたものの、日本語で改めて書いてみると、案外むずかしい。。。とりあえず、以下がざっと下書きです。2割くらい削らないといけないかも。よかったらご感想・ご意見くださいまし。
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子宮頸(しきゅうけい)がんとは、子宮の入り口(子宮頚部)に起こるがんのことです。赤ちゃんが育つところ(子宮体部)にできるがんは、子宮体がんといって、まったく性格の違うがんです。今回は子宮頸がんにしぼってお話しますね。

子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスです。HPVには100以上の種類がありますが、子宮頸がんの発症に関係するのは15種類ほどです。なかでもHPV16型と18型が子宮頸がんの原因の70%を占めています。

HPVは性行為でうつる感染症のNo.1です。じつに、性行為経験者のおよそ75%(4人に3人!)が一生のうち一度はHPVに感染します。それだけありふれたHPVですが、感染した人が全員がんになるわけではありません。9割の人は自分の免疫力によっておよそ2年のうちに体からウイルスを消し去ることができます。ところが一部の人にはそのまま感染が続き、前がん状態の部分ができ、それがさらにがんに変化することがあるのです。

HPV感染から前がん状態、さらにがんに進むまでに少なくとも数年かかります。前がん状態やがんの早期は、自覚症状が全くないので、検診で早期に発見することがとても大事です。毎年検診を受けることで、がんに進む前の段階のどこかで、変化を見つけて治療することができます。子宮頸がん検査のことを、英語ではPap smear といいます。

残念なことに日本では、子宮頸がん検診を受けている女性はおよそ20%にすぎません。(何を隠そう、この私も20代後半まで受けていませんでした。)しかし子宮頸がんは、今や日本では20-30代の女性のがんのトップになっています。「産婦人科」というと、妊娠した人が行くところと思われている方もあるかもしれませんね。しかし妊娠とは関係なく、女性が健康にすごすためには子宮頸がん検診を欠かすことはできません。21歳以上の女性は全員、21歳以下でも性行為を開始してから3年以上経過している人は、検診が必要です。

アメリカでの検診は、産婦人科やfamily medicine を標榜する医療機関で、医師・Nurse Practitioner(診察や処方のできる教育と訓練を受けた看護師)・ Physician Assistant などの元で受けることができます。子宮頸がん検診とあわせて、月経にまつわる相談(月経痛、月経不順など)、避妊方法の相談、不妊症の相談、にきびの相談など、女性ならではの他の悩みごとの相談にも乗ってもらいましょう。

検診とあわせて、お勧めしたいのは、HPVワクチンです。アメリカで普及しているHPVワクチンGardasilは子宮頸がんの70%の原因となっているHPV16型と18型の感染を防ぎます。尖形コンジローマ(性器にできるイボの一種)の原因の90%となっているHPV6型と11型の感染も、このワクチンで防ぐことができます。性行為を開始する前に接種するのが最も効果的です。現在アメリカでは9歳から26歳の女性に接種が勧められています。6ヶ月の間に3回接種します。小児科、内科、産婦人科などで受けることができます。ワクチンはすべてのHPV型の感染を予防するわけではないので、ワクチンを受けた人であっても、子宮頸がん検診はやはり必要です。

参考になるウェブサイトをご紹介します。
子宮頸がん予防の会(日本語)
http://www.teal-and-white.jp/index.html
子宮頸がんを考える市民の会(日本語)
http://www.orangeclover.org/index.html
Medline Plus (英語)
http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/cervicalcancer.html

3 件のコメント:

  1. 本当に下書き?とてもわかりやすく書かれていると思います。このままで良いのではないでしょうか?あっ、字数制限があるのですね?

    「21歳以上の女性は全員、21歳以下でも性行為を開始してから3年以上経過している人は、検診が必要です。」のところ、アメリカで推奨されているガイドラインですよね。日本でももっと普及させてほしいと思います。

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  2. いこさん、
    日本でも20歳から自治体の負担で子宮頸がん検診が受けられるようになったのですが、実際利用する人はなかなか増えていないようです。

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  3. わかりやすくてInformative。すごく良い健康教育ですね。さすが!!これを読んだ人は、NPってすごいって、思うと思います。Pap Smearは何歳の人は、何年に一度受けるべきとか、頻度が書いてるといいかも。ワクチンも、一回受けたら生涯OKなのか、インフルエンザみたいに毎年少しずつ違う菌がでてきたりして、毎年受けたほうがいいのか、とか。
    あとは、両方ともいくらかかるのか、知りたいです。保険によって違うんでしょうけど。保険でカバーされるのか、ワクチンなどは、実費なのですか?それとも無料?kiwi

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