2009年3月17日火曜日

性感染症における「迅速パートナー治療」

継続教育の一環として、性感染症関するwebinar (オンラインで行われるセミナー)をクリニックで見た。私にとって、一番印象に残ったのは、Expedited Partner Therapy (迅速パートナー治療)の話。初めて聞く言葉。

ある方がクラミジア感染症、または淋菌感染症と診断された場合、その方のパートナーの治療も必要となる。通常は、患者さんがパートナーに治療の必要性を伝えて、報告を受けたパートナーが後日医療機関にかかり、診察+検査+薬の処方を受ける。検査結果が出るまでには数日から1週間かかるのと、感染してから日が浅いとどっちみち検査上は偽陰性になることもあるので、結果が出るまで待たずに、あえて感染しているとみなして診察当日から治療を始める。

これに対し、迅速パートナー治療では、クラミジア感染症、または淋菌感染症と診断された患者さんに、ご本人の薬に加えて、パートナーが使う分の薬も処方してしまう。そして患者さんからパートナーに薬を渡してもらうというわけ。パートナーは、医療機関にかかるための予約をしたり診察のための時間を設けたりすることなしに、即治療が始められるわけだ。

迅速パートナー治療を取り入れると、パートナー同士ほぼ同時に治療ができるため、クラミジアおよび淋菌の再感染率は、通常の治療の場合よりも減るということである。こういう薬の処方の仕方は、州によって可能な州とそうでない州があり、幸いペンシルバニア州ではOKなのだが、クリニックのプロトコルでは触れられていないので、残念ながらわたしのクリニックでは実施できない。

何度もクラミジア感染症を繰り返している患者さんにときどき出会う。パートナーが治療を済ませたと口ではいうものの実際にはそうでなかったり、パートナーにまた別のパートナーがいたりして、治療をしてもまた新たに感染してしまうのだ。迅速パートナー治療を取り入れても、再感染をゼロにできるわけじゃないが、より合理的でbetter な方法として採用する価値はあると思う。とくに性感染症の有病率の高い医療機関なら、なおさらだ。

CDCのウェブサイトに、もっと詳しい説明あり。この治療法がOKな州とそうでない州の地図も載っている。
http://www.cdc.gov/std/EPT/

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