2009年1月20日火曜日

コルポスコピーとたばこのこと


写真: この前「東京商店」で買った納豆。水戸の「水」の字の上に、2.19と書かれた値段のシールが貼ってある。(写真をクリックすると、拡大できます。でも拡大しなくてもいいです。) 水戸出身の小芋としては、納豆は重要です。でもこのパッケージを水戸で見たことはないです。おかめ納豆など他のメーカーのものもあったのですが、これが一番安かったので、つい値段で決めてしまいました。

火曜日の午前中は、コルポスコピーやIUD(子宮内避妊具)の挿入などのprocedure (処置)の時間ということになっている。が、無断キャンセル率の多いクリニックなので(3割以上ーー天気にもよる)、他の患者さんの予約も入っている。無断キャンセルする患者さんの人数は、日によって違う。クリニック長の判断で、このところ日々の予約数を実際に可能な数よりかなり多めにしてしまっている。だから、たいがいナースプラクティショナーにしわ寄せがくる。

それはともかくとして、
ティーナはコルポスコピーの資格を持っているので、子宮頚部細胞診(いわゆる子宮頚がん検査)の結果、異型性(正常の細胞と違って形のいびつな細胞)の結果がでた患者さんのフォローアップが自分で出来る。

子宮頚部細胞診では、子宮頚部の部分をヘラとブラシのようなものでやさしくこすって、その部分の細胞のサンプルを取る。それを検査機関に送ると、細胞が正常な形をしているか、それともちょっといびつなものがあるか、すごくいびつなものがあるかを調べてくれる。いびつになるほど、がんへ移行している(まだがんじゃないけど、もはや正常ではない細胞)、または本物のがんの可能性があるので、調べないといけない。

そういうときに活躍するのが、コルポスコピーという機械。発音しにくい名前をしているが、要は顕微鏡。子宮頚部(頚とは首といういみで、子宮頚部というのはつまり、子宮の入り口の部分のことです)を20倍くらいに拡大して見られる。(顕微鏡という割には倍率があんまりないね。) で、肉眼で見るよりも、表面の色や形を詳しく見ることができる。

コルポスコピーは、子宮頚部を緑色(青のこともある)の照明で照らす。さらにお酢を綿棒につけて、子宮頚部に塗ると、異常のある細胞のある部分が、白く浮き出てくる感じになる。ちなみにお酢は、そのへんのスーパーで売っているお酢。どこがより白いか、白い部分は平たいか・それとも盛り上がっている感じか、などを観察する。盛り上がっているところは、特にあやしい。平らでも、タイルみたいな模様が入っていたりすると、あまりよろしくない。

全体像が頭に入ってから、異常が疑われる部分の組織のかけらを ぴきっと取ってきて、これを検査に出す。あと、子宮口のすぐ内側の部分はコルポスコピーでは見えないので、その部分の細胞もぬぐってきて、検査に出すことが多い。

私はコルポスコピーの資格はないので、自分でコルポスコピーをすることは当面はないけれど、ティーナが観察している内容を自分も知っておくことは、自分が子宮頚部細胞診をする上で、とっても役立つ。(異常な場合の見え方を知っていないと、正常な場合を「正常だ」と自信を持って言えないでしょ。)

ティーナはカルテに観察した様子を、絵と言葉で記録する。絵は大事。

コルポスコピーを経験する患者さんの多くは、タバコを吸っている。ティーナは、すきあらばすぐ禁煙の話を織り交ぜるのが得意だが、コルポスコピーのときは、特に熱が入る。喫煙は、肺や気管支などの呼吸器に悪いだけじゃなくて、子宮頚がんとも関係が深いのだ。

ちょっと説明してみる。
子宮頸がんの背景には、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルス感染がある。HPVはとてもありふれたウイルス。人間に悪さをさほど起こさないものもあるけど、性器のまわりにイボを作る困ったタイプ、子宮頚部にじわじわと進入し細胞を異常化させてがんに発展させる、ワルのタイプもある。

健康で、免疫力がある人は、性的な接触で(インターコースに限らず)パートナーからHPVをもらっても、自分の免疫力でウイルスをノックアウトできることが多い。たとえ、ワルのタイプのHPVが子宮頚部の細胞を異常化させても、何ヶ月かのうちに正常に戻せることが多い。

ところが、スモーカーの場合だと、
タバコによって、免疫力が日ごろから落ちている → 本来なら体が持っている、異常細胞を修復して正常化させる能力が十分発揮されない → 異常な細胞が体から減ることなくむしろ増えていく → がんへの道
というわけだ。

タバコを毎日1箱吸うと、年に1600ドル(16万円くらい)かかっているのよ! とティーナ。失業などで公的扶助を受けている患者さんで、タバコを吸って、ますます自分を厳しい環境に置いている人も少なくない。お金を払ってまで、不健康になるのは、むちゃもったいない。そしてそのお金が、他のひとがせっせと働いて収めた税金かと思うと、なおさらもったいない。

若くして(たぶん子どものときから)はじめたタバコは、なかなかやめられない。最初から吸わないに限る。大人の患者さんにタバコやめて!、と懇願するより、子どもたちに タバコは絶対あかんよ、と伝えるほうがたぶん楽。

臭くない診察室、大歓迎。(ドア開けたとたんに、ぷんぷんとにおうのです。患者さんの服に、タバコ臭がしみついているってこと。) 

あと、HPV(ヒトパピローマウイルス)のワクチンをバンバン打ちたい。まだ高すぎて(125ドルくらいのを3回接種する)、利用できない患者さんが大多数。とても残念。ちなみに日本では、ワクチンはまだ治験の段階。

4 件のコメント:

  1. 勉強になりました。

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  2. タバコは悪いことだらけだね。何がよくてみんな吸い始めるのかな?

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  3. 何がきっかけでタバコを吸い始めるかは、人によって違う理由があるでしょうけど、周りに(親・兄弟・友達など)に吸っている人が多い中で育つことは、最初の喫煙に大きく影響していると思います。妊娠中もタバコをやめられないママも多いので、胎内にいるときからタバコのある環境で育っていく赤ちゃんも少なからず。禁煙に果敢に挑戦していく人をこれからも応援し続けます。

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  4. 私はん〜3回吸って止めたけど、今から60年くらい前は、タバコをすうのが大人に近づいた印だった。口の中が辛くなるし、鼻に吸い込めば痛いしむせるし、なんでこんなものを偉そうに吸うんだと思って止めた。
    これをガマンするのが大人だと思えなかった。
    割礼が大人の仲間入りの印、とか入れ墨とか、バンジージャンプとか男の大人はやせ我慢が出来ないとダメだった。

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